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鳥嶋真也のWebサイトです


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2018年9月17日・Web(その他)

宇宙の果てまで見える目

アマナ/ネイチャー&サイエンスの新メディア『NATURE & SCIENCE』に、『宇宙の果てまで見える目 夢の超大型望遠鏡を叶える、オハラのゼロ膨張ガラス』という記事を書きました。

日本を含む5か国が共同で、2027年以降の運用開始を目指して建設を予定している超大型望遠鏡「TMT」。その主鏡の材料に採用された、日本の光学ガラス・メーカー「オハラ」のゼロ膨張ガラス「クリアセラム-Z」について、開発者の南川弘行さんにお話を伺いました。


2018年7月25日・ラジオ出演

NHKラジオ ニュース番組『Nらじ』

 2018年7月25日放送のNHKラジオ ニュース番組『Nらじ』にて、「民間の超小型ロケットの課題と可能性」というテーマで、世界中で活発になっている超小型ロケットの開発、その背景にある小型・超小型衛星ブーム、それらをとりまく課題や可能性などについて解説しました。


2018年6月25日・雑記

“Dark Side of the Moon”と”Far Side of the Moon”


NASAの月探査機「LRO」が撮影した、月の裏側と地球 Image Credit: NASA

 ダーク・サイド(dark side)と聞いて、なにを思い浮かべるだろうか。直訳した「暗い面」、スター・ウォーズに出てくる「暗黒面」など、いずれにしても暗黒や影、負といった印象が真っ先に来る。

 2018年5月21日、中国は月の裏側に位置する軌道に向け、通信衛星を打ち上げた。「鵲橋」(じゃくきょう、かささぎばし)と名付けられたこの衛星は、今年末に月の裏側に着陸する予定の探査機「嫦娥四号」の、地球との中継を担うことを目的としている1

 月は自転周期と公転周期がほぼ同じ、つまり月が1回自転する間に、地球のまわりを1周する。そのため、地球にはつねに同じ面を向けている。この地球に向いている面を「表」、逆にその反対側にあたる、永遠に地球のほうを向くことのない面を「裏」と呼んでいる。この月の裏側に探査機を着陸させると、月自身がつねに壁となり、地球と通信ができない。そこで、地球・月系のラグランジュ第2点をまわるハロー軌道――月の裏側と地球を同時に見渡せる場所に、通信衛星が打ち上げられたのである。

 この鵲橋の打ち上げは、中国による月探査の新たな一歩として、欧米のメディアでも大きく取り上げられた。しかし、見出しなどに、「月の裏側」を指して「Dark Side of the Moon」という言葉を用いるところがいくつかあった。

 たとえばロイター通信は『China launches satellite to explore dark side of moon: Xinhua2』、CNNは『China to explore ‘dark side’ of the moon3』、インディペンデントは『China takes major step towards first ever landing on the dark side of the Moon4』といった具合である。

 もちろんdark sideとはいっても、月の裏側がずっと暗いというわけではない。もちろん暗いときもあるが、それはたんに一時的に太陽光が当たらず影になっているからで、月の裏側にも太陽の光は当たるし、満ち欠けもする。表と裏では、地質学的には違いがあるそうだが、光の当たり方は同じである。

 月の裏側をDark Side of the Moonと呼ぶのはいまに始まったことではなく、辞書にもしっかり、月の裏側を意味する言葉として載っている5。はっきりとした由来は不明だが、BBCによると、「月の裏側は(地球から決して見えず)謎に包まれていることから、darkと呼ばれるようになった」6のだという。

 とはいえ、dark sideといえば暗い面を意味するのでは、紛らわしいのでは、というのは誰もが思うところだろう。では、英語圏ではどうかと思い、Twitterなどを検索してみると、「Dark Side of the Moon」というタイトルで記事を出したメディアのツイートに「月の裏側はつねに暗いわけではないぞ」というツッコミが入っている場面がいくつかあった7

 実際にどれだけの人が「月には永遠に暗闇の面がある」と信じているかというデータは見つけられなかったが、2011年にはNASAがこの話題についてわざわざ解説する記事を出している8ことからも、米国ではそれなりに「あるある」な誤解なのかもしれない。「アポロは月に行っていない」と信じる人が少なからず存在することを考えれば、むべなるかな、というところである。

 最初に月の裏側をDark Side of the Moonと呼んだ人は、おそらくFar sideよりも詩的で、味のある、いい表現だと思ったのだろう(その気持ちには大いに共感する)。

 しかし、月の裏側にも太陽光は当たる、つまり暗いという意味のdark sideではない、という知識が定着するよりも先に、ピンク・フロイドのアルバムにはじまり、映画『トランスフォーマー』のタイトルなどに使われるなどして言葉がひとり歩きし始めたことで、誤解が生まれていったのだろう。まさに、月の裏側がdark(もちろん謎に包まれたという意味)であることが生み出したものといえる。

 また、月が満ち欠けし、大きく影に覆われたり、まったく見えなったりしてダイナミックに変化することも、そうした誤解が広まる手助けをしたのかもしれない。さらに、月の極域のクレーターには永久影(eternal darkness, perpetual darkness)と呼ばれる領域(sideではない)があることから、知識が混ざってしまったという理由もあろう。

 ちなみに「月の裏側」を指す英語には「Far side of the Moon」という言葉もある。直訳すると「月の向こう側」という意味で、月の裏側を指す言葉としてはこちらのほうが正確である。鵲橋の報道では、科学系メディアをはじめ、BBC9やテレグラフ10などもこちらを使っている。ガーディアンは、当初はdark sideという見出しだったが、指摘を受けてfar sideに書き換えている11

 もちろん、ニュース記事などにおいては、Far sideと書くのが適切なのは疑いようもない。今回のことを受けて、次からはFar sideと書くメディアも増えるかもしれない。

 とはいえ、dark sideという響きにもちょっと惹かれるものがある。BBCの記事12ような解説を入れつつ使うのであれば、そんなに悪いことではないように思う。

 いずれ、月の裏側の探査が進んで謎が消え、そして人類が住むようになって月の裏側は永遠に暗闇ではないことが常識になれば、dark Side of the Moonという言葉には、過去の人類が月の裏側に抱いていた想いを偲ぶ意味しか残らなくなるのだから。


2018年4月14日・雑記

スペースXのロケット回収船の名前について


スペースXのロケット回収船のひとつ「もちろんいまもきみを愛している」号(Of Course I Still Love You) Image Credit: SpaceX

 スペースXがロケットの第1段機体の回収のために運用しているドローン船「ASDS」(Autonomous spaceport drone ship)の日本語名について、たびたび由来などの問い合わせをいただくので、この機会に一度、まとめておきたい。

 スペースXが現在運用している2隻のASDSのうち、西海岸のカリフォルニア州に配備している船には英語で「Just Read the Instructions」(JRtI)、東海岸のフロリダ州に配備している船には「Of Course I Still Love You」(OCISLY)という名前が付けられている。

 これらは共に、英国の作家イアン・M・バンクスさんが書いたSF小説『The Player of Games』に登場する、宇宙船の名前から取られている1。同社のイーロン・マスクさんはSF好きとして知られ、またバンクスさんが2013年に亡くなったことに敬意を表して名付けたという2

 この『The Player of Games』は、日本でも浅倉久志さんによる翻訳で、『ゲーム・プレイヤー』という邦題で発売されている3。そしてこの中で、JRtIは「指示をよく読め」号、OCISLYは「もちろんいまもきみを愛している」号と訳されている。私がこの船について取り上げる際は、この訳にしたがっている。

 原文も邦訳も、船にしては変な名前だが、『ゲーム・プレイヤー』やその一連のシリーズ(「ザ・カルチャー」シリーズと呼ばれる)では、こうした変な名前の宇宙船が出てくることがお約束になっており、物語の中で登場人物が「戦艦にしては変な名前だ」ということを指摘する場面もある。

 ちなみに現在、スペースXは3隻目のASDSを建造しており、マスクさんによると、名前は「A Shortfall of Gravitas」になるという4。完全に同じ名前の船は「ザ・カルチャー」シリーズには登場しないが、「ナントカ Gravitas」という名前は、これまた同シリーズのお約束になっているため、それにちなんだオリジナルの名前なのかもしれない5

 残念ながら、「ザ・カルチャー」シリーズは『ゲーム・プレイヤー』しか邦訳されておらず、また「ナントカ Gravitas」という船は同書には登場しないことから、浅倉久志さんによる翻訳で統一することができない。そのためどういう日本語訳をあてるかが難しいところである。「A Shortfall of Gravitas」は直訳すると「厳粛さの不足」というような意味になるので、ちょっと他の名前と合わせて「厳粛さが足らない」とでもすべきだろうか。

 ちなみに「A Shortfall of Gravitas」は完成後、フロリダに配備される予定で、ファルコン・ヘヴィの2機のブースターを、「もちろんいまもきみを愛している」号と共に洋上で回収したり、ファルコン9の第1段回収を交代で担当し、打ち上げ頻度を高めたりできるようになるという6


2018年4月2日・テレビ出演

日本テレビ系列『スッキリ』

 2018年4月2日放送の日本テレビ系列『スッキリ』にて、「天宮一号」の大気圏再突入について解説しました(電話出演)。


2018年2月8日・ラジオ出演

文化放送『斉藤一美 ニュースワイドSAKIDORI』

 2018年2月8日放送の文化放送『斉藤一美 ニュースワイドSAKIDORI』にて、北朝鮮の弾道ミサイルについて解説しました。


2018年1月31日・Telescope Magazine

宇宙ビジネスには大きな可能性がある─動き出すなら今だ!(1/4) | Telescope Magazine

 電気機器メーカー、東京エレクトロンさんのWebマガジン『Telescope Magazine』に、東京に拠点を置くベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインで、宇宙ビジネスへの投資家として活躍する”宇宙エバンジェリスト”青木英剛さんに、宇宙ビジネスがもつ可能性と、現状、そして未来についてお話を伺った記事を書きました。

Telescope Magazineで記事を読む


2018年1月24日・テレビ出演

日本テレビ系列『スッキリ』

 2018年1月24日放送の日本テレビ系列『スッキリ』にて、「天宮一号」の大気圏再突入について解説しました(電話出演)。


2017年12月28日・Telescope Magazine

宇宙への翼―宇宙旅行の実現を目指す日本発の企業「PDエアロスペース」(1/4) | Telescope Magazine

 電気機器メーカー、東京エレクトロンさんのWebマガジン『Telescope Magazine』に、宇宙旅行の実現を目指す日本の企業「PDエアロスペース」を取材した記事を書きました。

Telescope Magazineで記事を読む


2017年9月26日・書籍(その他)

雑誌『経済界 2017.11月号』に宇宙ビジネスの記事を書きました

 経済界さまより発行されている雑誌『経済界 2017.11月号』(2017年9月22日発売)に、宇宙ビジネスの記事を書かせていただきました。

 今号では「宇宙ビジネス」が特集のひとつとなっており、私は海外や日本の宇宙ビジネスの現状や今後について書きました。とくに経済誌ということで、数多くの宇宙ヴェンチャーが立ち上がっては消えていった中で、なぜスペースXやブルー・オリジンは成功しつつあるのか、そして日本の宇宙ビジネスが成功するためにはなにが必要なのか、という話を中心に書いています。

 今回、このような機会をいただき、記事を書かせていただこともありがたいですが、なにより歴史ある経済誌で、宇宙ビジネスの話が大々的に取り上げられたこと、それにご協力できたことがなによりもうれしく思います。あと「NewSpace」という単語を、日本語の媒体で大きくどんっと出せたことも。

 私の記事だけでなく、JAXAの松浦直人さん、スカパーJSATの小山公貴さん、アクセルスペースの中村友哉さん、ASTRAXの山崎大地さんといった、実際に宇宙ビジネスの現場で活躍しておられる方の記事もありますので、ぜひお手にとってご覧いただけますと幸いです。

 これから宇宙ビジネスは、米国など海外だけでなく、日本でもどんどん拡大していくと思います。その一助となれるよう、そしてその動きや、その時々での成果や課題などを正確に伝えられるよう、これからも精進していきたいと思います。