КОСМОГРАД

 経済界さまより発行されている雑誌『経済界 2017.11月号』(2017年9月22日発売)に、宇宙ビジネスの記事を書かせていただきました。

 今号では「宇宙ビジネス」が特集のひとつとなっており、私は海外や日本の宇宙ビジネスの現状や今後について書きました。とくに経済誌ということで、数多くの宇宙ヴェンチャーが立ち上がっては消えていった中で、なぜスペースXやブルー・オリジンは成功しつつあるのか、そして日本の宇宙ビジネスが成功するためにはなにが必要なのか、という話を中心に書いています。

 今回、このような機会をいただき、記事を書かせていただこともありがたいですが、なにより歴史ある経済誌で、宇宙ビジネスの話が大々的に取り上げられたこと、それにご協力できたことがなによりもうれしく思います。あと「NewSpace」という単語を、日本語の媒体で大きくどんっと出せたことも。

 私の記事だけでなく、JAXAの松浦直人さん、スカパーJSATの小山公貴さん、アクセルスペースの中村友哉さん、ASTRAXの山崎大地さんといった、実際に宇宙ビジネスの現場で活躍しておられる方の記事もありますので、ぜひお手にとってご覧いただけますと幸いです。

 これから宇宙ビジネスは、米国など海外だけでなく、日本でもどんどん拡大していくと思います。その一助となれるよう、そしてその動きや、その時々での成果や課題などを正確に伝えられるよう、これからも精進していきたいと思います。



建設が進む「深宇宙探査用地上局」(GREAT)(立ち入り可能場所より撮影)

 先日、長野県佐久市で建設が進む、JAXAの「深宇宙探査用地上局」(GREAT)に行ってきました。

 GREATは、現在「あかつき」や「はやぶさ2」など日本の探査機との通信に使われている、臼田宇宙空間観測所の64mアンテナの後継局として建設が進められているアンテナです。アンテナの直径は54mとやや小さくなりますが、技術の進歩により受信能力などはそのままで、さらに新たにKa帯を使った大容量の通信にも対応できるようになります。

 GREATの建設場所は、現在の臼田宇宙空間観測所から北西に約1.5km離れたところに位置します。ただ、もちろんそのまま1.5km走れば着くというわけではなく、一度山を下り、別の道でまた登る必要があるため(両者をつなぐ道が途中にありますが、舗装されていない砂利道です)、両方を見て回ろうとすると少し苦労します。

 とはいえ、細く荒れた山道の先にある現在の64mアンテナとは違い、GREATは「蓼科スカイライン」と名付けられた綺麗に整備された広い道沿いにあるため、その点ではやや楽かもしれません。ちなみに、蓼科スカイラインのおかげで建設しやすいことが、新アンテナの建設場所としてここが選ばれた理由のひとつでもあります。


円形になっている部分にGREATが建つと思われる(立ち入り可能場所より撮影)

 Google Earth/Mapsでこの建設地を見るとまだ木に覆われていますが、現在ではすでに造成が行われており、仮設事務所や衛星アンテナなども設置されています。

 周囲にあるフェンスのそばまで近づくことは不可能ではありませんが、その手前に立入禁止の立て札がありますので、入るのはそこまでにしておくべきでしょう(ちなみに掲載している写真は、その立入禁止の札が立っている場所から撮影しました)。また、周囲に駐車場はなく、さらに蓼科スカイラインは車が結構なスピードで走っていますので、一時駐車する場所や時間にも注意が必要です。

 GREATの運用開始は2019年度に予定されており、これから徐々に、巨大アンテナができあがっていく様子が見られると思います。みなさんも、臼田の64mアンテナや野辺山宇宙電波観測所を訪れた際などに、ちょっと寄り道して見てみると楽しいかもしれません。


臼田宇宙空間観測所にある64mアンテナ。GREATはこれより直径が10m小さくなる

参考


イプシロン2号機の打ち上げ(撮影: 渡部韻)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2016年12月20日、「イプシロン」ロケット2号機の打ち上げに成功した。この打ち上げは、イプシロンとしては2機目ではあるものの、3年前に打ち上げられた1号機(試験機)とは違い、ロケット機体に大きく改良を加え、打ち上げ能力の向上などを図った「強化型イプシロン」の初めての打ち上げとなった1

 打ち上げや強化型での改良点などについては、ハーバー・ビジネス・オンラインさんで書いた『「イプシロン」ロケット2号機、打ち上げ成功!  「ガンプラ」を目指す日本の固体ロケット』をご覧いただければと思う。今回は、打ち上げ前の2016年11月24日に行われた記者説明会で、イプシロンのプロマネを務める森田泰弘教授に伺った話について書いてみたい。

 周知のとおり、イプシロンには「基本形態」と「オプション形態」という、大きく2つのタイプがある。基本形態は固体モーターのみの3段式ロケット。オプション形態は基本形態の固体3段式の上に、「ポスト・ブースト・ステージ」(PBS)と呼ばれる、小型の液体ロケット段を追加する。前者は今回「あらせ」を打ち上げた形態で、後者は「ひさき」を打ち上げた1号機で使われ、また2017年度中の打ち上げを予定している3号機でも使われる。

 固体ロケットは一度点火すると推進薬がなくなるまで燃焼を止めることはできず、またスロットリング(推力の調整)もできず、さらに性能に個体差が出てしまうといった理由で、軌道投入精度がどうしても悪くなるという宿命を背負っている。そこで正確な軌道に投入しなければならない衛星の打ち上げではオプション形態を使い、臨機応変な制御が可能な液体ロケットのPBSによって、第3段の飛行までに生じた軌道の誤差を修正し、正確な軌道に衛星を送り込めるようにしている。

 さらにこのPBSには、「ラムライン制御系」という姿勢制御機構も搭載されている23。イプシロンの第3段はスピン安定、つまり常に回転しながら飛ぶので、普通のスラスターなどは使えない。そこで、機体が1回スピンするごとにスラスターを短くプシュっと噴射することで、回転しながらでも姿勢制御ができる装置が搭載されており、これをラムライン制御系と呼ぶ。第3段の飛行中にこのラムライン制御を使うことで、あらかじめ軌道の誤差を少なくし、PBSでの修正量を少なくする、つまりPBSの推進剤を節約することができる。

 ――ではもし、PBSは積まず、基本形態にラムライン制御系のみを搭載すれば、軌道投入精度はオプション形態ほど良くないものの基本形態よりは良く、一方で打ち上げ能力は、基本形態より落ちるもののオプション形態よりは大きな、ちょうど中間の性能をもった形態ができるのではないだろうか。

 こんな質問を、昨年11月24日に行われた記者説明会の後、森田教授に伺った。その答えは「可能だが、意味がない」というものだった。

 まず、イプシロンは固体のみの基本形態でも、衛星側の要求どおりの軌道に投入することができる。もちろん多少の誤差は生じるものの、それほど大きく外すことはまずない。また、基本的に基本形態で打ち上げられるのは、多少軌道がズレてもミッションに支障のない衛星だったり、あるいはあらかじめ衛星側のスラスターで軌道修正することを前提にしていたりするので、多少の誤差でも問題にならないのだという。

 もちろん、ミッションによっては多少の誤差さえも許されないものもある。たとえば3号機で打ち上げが予定されている「ASNARO-2」のような地球観測衛星は、太陽同期軌道という、高度や軌道傾斜角などの条件がきっちり定められている軌道に投入しなければならない。この場合、基本形態+ラムライン制御系だけの修正では不十分なので、PBSを使うことがが必須となる。

 もっとも、技術的にはラムライン制御系のみ搭載する形態を造ることは可能なので、衛星側から要求があれば対応はできるという。ただ「そういう要求はまずないだろう」とのこと。つまり、基本形態を望むような衛星は多少の誤差を承知で乗るので、ラムライン制御系を搭載することによる多少のコスト・アップと性能低下を嫌うし、オプション形態を望むような衛星は、そもそもラムライン制御だけの修正では間に合わない、したがって、その中間性能のロケットは誰も望まないのだという。

 そんな話を一通り伺った後、森田教授は最後に、「たとえるなら、基本形態はストライク・ゾーンのど真ん中に球を投げ込むことができますが、オプション形態は内角高めとか外角低めとかに狙って投げ込めます」と語った。

 注意してもらいたいのは、「ストライク・ゾーンのど真ん中に」というところ。「ストライク・ゾーン内に」ではなく、そのど真ん中に入れられるというのである。

 その言葉が、わかりやすさを優先した、やや不正確な”いわゆる例え話”ではなく、正真正銘言葉どおりの意味であることは、イプシロン2号機の打ち上げで証明されることになった。

「あらせ」は、計画では近地点高度219km(誤差±25km)、遠地点高度3万3200km(誤差±2000km)、軌道傾斜角31.4度の軌道に投入されることになっていた(誤差±2000kmというとすごく大きいように感じるが、今回のミッションではそれほど大きな数字というわけではない)。

 それに対し、実際の打ち上げで投入された軌道は、近地点の誤差は-3.5km、遠地点の誤差は-1279km、傾斜角は誤差なしというものだった4。あらかじめ許容された範囲より、さらに誤差の小さな軌道、すなわち”ストライク・ゾーンのど真ん中”に、「あらせ」は投げ込まれたのである。


 洋泉社さまより、執筆の一部を担当した書籍『イーロン・マスク』が出版されました。

 実業家のイーロン・マスク氏の生い立ちや、同氏が手掛けているスペースXやテスラなどについて解説した本です。

 私は、スペースXのこれまでの歩みや、「ファルコン9」ロケットや「ドラゴン」宇宙船の解説、よくライヴァルとして取り上げられるジェフ・ベゾス氏の宇宙企業ブルー・オリジンとの比較、そして実業家の堀江貴文さんへのインタヴューなどを担当しました。

 お手にとってご覧いただけますと幸いです。