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2018年4月の記事一覧

2018年4月14日・雑記

スペースXのロケット回収船の名前について


スペースXのロケット回収船のひとつ「もちろんいまもきみを愛している」号(Of Course I Still Love You) Image Credit: SpaceX

 スペースXがロケットの第1段機体の回収のために運用しているドローン船「ASDS」(Autonomous spaceport drone ship)の日本語名について、たびたび由来などの問い合わせをいただくので、この機会に一度、まとめておきたい。

 スペースXが現在運用している2隻のASDSのうち、西海岸のカリフォルニア州に配備している船には英語で「Just Read the Instructions」(JRtI)、東海岸のフロリダ州に配備している船には「Of Course I Still Love You」(OCISLY)という名前が付けられている。

 これらは共に、英国の作家イアン・M・バンクスさんが書いたSF小説『The Player of Games』に登場する、宇宙船の名前から取られている1。同社のイーロン・マスクさんはSF好きとして知られ、またバンクスさんが2013年に亡くなったことに敬意を表して名付けたという2

 この『The Player of Games』は、日本でも浅倉久志さんによる翻訳で、『ゲーム・プレイヤー』という邦題で発売されている3。そしてこの中で、JRtIは「指示をよく読め」号、OCISLYは「もちろんいまもきみを愛している」号と訳されている。私がこの船について取り上げる際は、この訳にしたがっている。

 原文も邦訳も、船にしては変な名前だが、『ゲーム・プレイヤー』やその一連のシリーズ(「ザ・カルチャー」シリーズと呼ばれる)では、こうした変な名前の宇宙船が出てくることがお約束になっており、物語の中で登場人物が「戦艦にしては変な名前だ」ということを指摘する場面もある。

 ちなみに現在、スペースXは3隻目のASDSを建造しており、マスクさんによると、名前は「A Shortfall of Gravitas」になるという4。完全に同じ名前の船は「ザ・カルチャー」シリーズには登場しないが、「ナントカ Gravitas」という名前は、これまた同シリーズのお約束になっているため、それにちなんだオリジナルの名前なのかもしれない5

 残念ながら、「ザ・カルチャー」シリーズは『ゲーム・プレイヤー』しか邦訳されておらず、また「ナントカ Gravitas」という船は同書には登場しないことから、浅倉久志さんによる翻訳で統一することができない。そのためどういう日本語訳をあてるかが難しいところである。「A Shortfall of Gravitas」は直訳すると「厳粛さの不足」というような意味になるので、ちょっと他の名前と合わせて「厳粛さが足らない」とでもすべきだろうか。

 ちなみに「A Shortfall of Gravitas」は完成後、フロリダに配備される予定で、ファルコン・ヘヴィの2機のブースターを、「もちろんいまもきみを愛している」号と共に洋上で回収したり、ファルコン9の第1段回収を交代で担当し、打ち上げ頻度を高めたりできるようになるという6


2018年4月2日・テレビ出演

日本テレビ系列『スッキリ』

 2018年4月2日放送の日本テレビ系列『スッキリ』にて、「天宮一号」の大気圏再突入について解説しました(電話出演)。